Blog

競合分析の前に。お客様が比べている見えない3つの競合

競合分析の前に。お客様が比べている見えない3つの競合

この記事の要点

  • お客様があなたを同業と比べているとは限りません。多くの場合、比べられている相手は「見えない3つの競合」です。
  • 見えない3つの競合とは、お客様があなたの提案と無意識に比べている「自分でやる」「何もしない」「別のことに使う」という3つの選択肢のことです。
  • 3つのうちどれに負けているかで、示すべきものが変わります。競合分析より先に、そこを確かめてください。

競合を調べ尽くしたのに、選ばれない。

価格も内容も見劣りしないはずなのに、返事が来ないまま止まってしまう。……これ、本当に多いです。

そういうとき、お客様が比べていた相手は、たいてい同業ではありません。この記事では、実際に比較されている「見えない3つの競合」と、それぞれに何を示せば選ばれるのかを整理します。

競合分析をしたのに、なぜ選ばれないのでしょうか

先に、自分の失敗から書きます。

私は、企業や講師の方の裏方として、思想や理念を言葉にし、選ばれる事業や仕組みへ変えていく仕事をしています。表に出るのはいつもクライアントの方で、私は後ろで原稿や導線をつくっている側です。

その私が自分で開催したセミナーが、人の集まらない会になったことがあります。内容は充実していたと思っています。ただ、ご案内が直前でした。

あとから考えると、負けた相手は同業のセミナーではありませんでした。その日にすでに入っていた予定です。

比べられていたのは中身ではなく、その日に時間を空けられるかどうかでした。

お客様は、比較表を作っていません

私たちは競合を調べるとき、同業を横に並べた表を作ります。価格、実績、対応範囲。そして、その表の中で勝とうとします。

けれど、お客様の頭の中にその表はありません。あるのは「この件、どうやって片づけようか」という一つの問いだけです。

あなたへの依頼は、その片づけ方の候補のひとつです。そして、ほかの候補は同業とは限りません。

見えない3つの競合とは何ですか

見えない3つの競合とは、お客様があなたの提案と無意識に比べている「自分でやる」「何もしない」「別のことに使う」という3つの選択肢のことです。

見えない3つの競合を並べた図。自分でやる、何もしない、別のことに使う、の3つの選択肢とそれぞれの状態の説明
お客様が比べているのは、この3つです。

競合① 自分でやる

「これ、自分でもできるかもしれない」。そう思われた時点で、比較は始まっています。

ここで比べられているのは価格ではありません。自分の手間の見積もりです。しかも、その見積もりはたいてい実際より軽く出ます。やったことがない作業ほど、短く見えるからです。

ですから「安いですよ」と伝えても効きません。効くのは、かかる時間のほうです。

競合② 何もしない

いちばん多く、いちばん気づかれにくいのがこれです。今のままでも一応回っている。困ってはいるけれど、今日でなくてもいい。そうして先送りされます。

この相手は名乗りを上げません。断りの連絡すら来ないので、こちらからは「検討中」に見えます。実際には、もう選ばれています。何もしない、が選ばれています。

競合③ 別のことに使う

予算は一つの財布から出ます。あなたの提案は、同業ではなく、採用や広告や設備投資と並べられていることがあります。

この場合、いくら同業との違いを説明しても届きません。相手が見ているのは「どの使い道が、いちばん目的に近いか」だからです。

それぞれに、何を示せば選ばれますか

見えない3つの競合それぞれに何を示すかをまとめた図。自分でやるにはかかる時間を数字で、何もしないには変わる前と後を具体で、別のことに使うには同じ目的への近さを示す
相手が違えば、示すものも変わります。

3つとも「同業より優れている理由」では動きません。示すものは、それぞれ別です。

  1. 「自分でやる」に対しては、かかる時間を数字で示す。やり方の解説ではなく、自分でやった場合の所要時間と、それを続けられる頻度を具体的な数で置きます。相手が軽く見積もっている部分を、責めずに埋めるだけです。
  2. 「何もしない」に対しては、変わる前と後を具体で示す。頼んだ場合に、何が、どう変わるのか。全体をまとめて語らず、1つの場面に絞って描きます。
  3. 「別のことに使う」に対しては、同じ目的への近さを示す。予算の使い道そのものを争わないでください。相手が本当に達成したい目的を先に聞き、そこへの距離で比べてもらいます。

②について、ひとつだけ補足させてください。ここで「今やらないと損をします」と急がせる書き方をよく見かけます。私はそれを使いません。急かす必要は、ありません。

不安で押した決断は、あとで必ず揺り戻しが来ます。解約や後悔という形で、結局は相手にもこちらにも返ってきます。だから、変化の大きさは描いても、締切で押さないと決めています。

自分の見えない競合は、どうやって確かめますか

推測でも当たりますが、聞いたほうが早いです。手順は3つです。

  1. 断られた方に、比較対象を聞く。「他社さんと比べられましたか」ではなく、「もしご依頼いただかない場合、どうされる予定でしたか」と聞きます。前者の聞き方だと、相手は答えを同業の中から探してしまいます。
  2. 申込・問い合わせフォームの自由記述を読み返す。「自分でやってみたのですが」「そろそろ何とかしたくて」。この2つの書き出しは、それぞれ競合①と競合②の申告です。
  3. 直近で断られた3件を並べる。1件だと理由が個別事情に見えます。3件並べると、同じ競合に負け続けているかどうかが分かります。

ただし、3つすべてに勝とうとしないでください

3つの競合を知ると、全部に反論したくなります。ですが、1つの提案で3つ同時に崩そうとすると、言うことが増えて、結局どれにも届かなくなります。

選ぶのはひとつです。直近で自分がいちばん多く負けている相手を1つ決めて、そこにだけ答える。それで足りるはずです。

それに、この3つは分類にすぎません。分類は目の前の人を理解する助けにはなりますが、その人が本当は何に困っているのかまでは教えてくれません。そこは、聞くしかないところです。

なぜ、競合分析より先にここを見るのか

ここ、私は長いこと逆をやっていました。まず同業を調べ、違いを探し、その違いを強く言う。売れない理由は伝え方が弱いからだと思っていたのです。

けれど、伝え方を強くするほど、相手の判断を急がせる方向に寄っていきます。それは、相手の判断力を育てるのではなく、判断を預からせる設計です。私はそちらへ行きたくありませんでした。

マーケティングは、売る技術というより、売り手と買い手の世界の見え方を揃える行為だと考えています。相手が本当は何と比べているのかを知ることは、そのいちばん手前にある作業です。見えていないものは、揃えようがありません。

そして、これを丁寧にやると、いちばん得をするのは誠実な人です。良い仕事をしている人ほど、押しの強さでは勝てません。誰かのために踏ん張っている人が、押しの弱さのせいで選ばれないのは、もったいないことだと思っています。

保存版:見えない3つの競合の確認リスト

  1. 直近で断られた3件を並べ、負けた相手を「自分でやる」「何もしない」「別のことに使う」で分けたか
  2. 断られた方に「もしご依頼いただかない場合、どうされる予定でしたか」と聞いたか
  3. 問い合わせの自由記述に「自分でやってみたのですが」「そろそろ何とかしたくて」が無いか見たか
  4. 「自分でやる」に対して、価格ではなく、かかる時間を数字で示しているか
  5. 「何もしない」に対して、締切や不安ではなく、変わる前と後を1つの場面で描いているか
  6. 「別のことに使う」に対して、相手が達成したい目的を先に聞いているか
  7. 今回こたえる相手を、3つのうち1つに絞ったか

この確認をすると、提案書の直す場所が変わります。多くの場合、足すのではなく、同業との比較の段落が減っていきます。

メールマガジンでは、こうした「売り込む前に確かめること」を、実際の場面に沿ってお届けしています。毎号、答えではなく問いを手渡すつもりで書いていますので、よろしければ下のご案内からお受け取りください。

最後にひとつ、持ち帰っていただければと思います。あなたのお客様は今日、あなたではなく何を選んだのでしょうか。

よくある質問

競合がいない商品でも、比較されているのですか

比較されています。同業がいなくても、見えない3つの競合は必ず存在するからです。むしろ同業がいない商品ほど、「自分でやる」と「何もしない」が強くなります。前例がないぶん、頼まないという判断がしやすいためです。まず、直近で断られた方が代わりに何をしたのかを確かめてください。

「何もしない」を選ぼうとしているお客様には、どう伝えればいいですか

締切や不安で急がせず、変わる前と後を具体的に描いてください。全体をまとめて語るのではなく、相手の一日の中の1つの場面に絞ると伝わります。不安で押した決断は、解約や後悔という形で戻ってきます。急がせないことは、遠回りではなく、選んだあとまで含めた最短距離だと考えています。

見えない3つの競合のうち、どれと比べられているかはどうすれば分かりますか

断られた方に「もしご依頼いただかない場合、どうされる予定でしたか」と聞くのがいちばん確実です。「他社さんと比べましたか」と聞くと、相手は答えを同業の中から探してしまいます。あわせて、直近で断られた3件を並べてください。1件では個別事情に見えますが、3件並べると同じ相手に負け続けているかどうかが見えます。

S.O
Written by
及川志伸

マーケティングプロデューサー/セールスコピーライター。2015年開業。「想いが、売上になり社会を動かす。」を旗印に、セールスレター・LP制作からファネル設計・運用まで一貫して手がける。

プロフィールを見る →