この記事の要点
- 施策の効果が分からなくなる原因は、分析力の不足ではなく、始める前に判断の基準を決めていないことにあります。
- 施策を始める前に「指標・取得方法・判定基準・検証日」の4行を書いておくと、続けるか、直すか、やめるかをその場で決められます。
- 数字で測れない目標は、目標ではなく願望です。測り方が書けない施策は、走り出す前に設計をやり直したほうが早く進みます。
「やってはみたのですが、効果があったのかどうか、正直よく分かりません」
ご相談のなかで、いちばん多く出てくる言葉のひとつです。広告でも、ブログでも、メール配信でも、扱っているものは違うのに、行き詰まり方は同じ形をしています。
原因は、たいてい分析の腕前ではありません。始める前に、何をもって「効いた」と言うのかを決めていないだけです。この記事では、施策を始める前に書いておく4行と、その書き方を整理します。
「効果が分からない」のは、分析の問題ではありません
施策が終わったあとに数字を見て、それから「これは良かったのか」を考える。多くの場合、この順番で進みます。
けれど、終わってから基準を探すと、私たちは見栄えのいい数字のほうを選んでしまいます。アクセスが伸びていればアクセスの話をし、伸びていなければ「認知は広がったはず」と言う。
悪気があるわけではありません。人は、自分がやったことを否定しないほうを自然に選ぶようにできています。
後から基準を探すと、判断は必ず甘くなります
基準が後づけになると、どの施策も「まあまあ良かった」に着地します。良かったことにできる数字は、探せばひとつは見つかるからです。
その結果、やめるべき施策がやめられません。限られた時間と予算が、そこに吸われ続けます。
逆のことも起こります。伸びかけていた施策を「思ったほどでもない」と早めに切ってしまう。どちらも、線を引いていなかったせいで起きています。
必要なのは、始める前の5分です
やることは、5分ほどのメモです。難しい分析も、新しいツールも要りません。
これから始める施策について、次の4行を書いておく。それだけです。
施策を始める前に決めておく4行

①指標——どの数字が動けば成功なのか
まず、動かしたい数字をひとつだけ選びます。売上、申込数、メルマガ登録数、返信数、来店数。何でも構いませんが、ひとつに絞ります。
ふたつ以上あると、片方が伸びたときに、そちらを見て安心してしまいます。選べないときは「この施策をやめたら、いちばん困る数字はどれか」と考えると決まります。
ここでアクセス数やフォロワー数を選びたくなったら、少し立ち止まってください。それが増えても次の一手が変わらないなら、指標としては弱いということです。
②取得方法——その数字を、どこで、どう見るのか
次に、その数字をどこで見るのかを、ツール名まで書きます。「アクセス解析で」では足りません。どの画面を開き、どの期間で、どう絞り込むかまで書きます。
ここを曖昧にしたまま始めると、検証の日が「数字を出す作業」から始まります。そしてその日はたいてい忙しく、翌週に回ります。
取り方が書けない数字は、実際には取れない数字です。書けなかった時点で、指標を選び直したほうが早く進みます。
③判定基準——いくつなら続け、いくつならやめるのか
3行目に、続ける・直す・やめるの線を数字で引きます。「登録が3件以上なら続ける、1〜2件なら見出しを直して継続、0件ならテーマごと変える」といった形です。
この線は、外れていても構いません。大事なのは、あとから自分に都合よく動かせない位置に、先に置いておくことです。
根拠がなくて決められないときは、「これ以下なら、自分は続ける気にならない」という感覚の線で十分です。1回目の目的は、正確な基準を作ることではなく、基準を持ったまま走ることにあります。
④検証日——いつ、その数字を見るのか
最後に、日付を入れます。「30日後」ではなく「9月16日」と書きます。
日付が入っていないと、私たちは数字を見たくなった日に見ます。良さそうな日には見て、悪そうな日には見ません。
カレンダーに入れてしまうのが確実です。ここまでで4行、時間にして5分ほどです。
4行を書く前と、書いたあと

上に並んでいるのは、私たちがつい書いてしまう形です。どれも間違ってはいませんが、この文からは、来月に何をするかが決まりません。
下は、同じ施策を4行に直したものです。決めた日に数字を見れば、続けるか、直すか、やめるかがその場で決まります。
違いは、やる気でも能力でもありません。判断の材料を、先に用意したかどうかだけです。
測れない目標は、目標ではなく願望です
厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、ここははっきりさせておいたほうが、結果的に親切だと思っています。
「認知を広げる」「ブランドを育てる」。どちらも大切なことですが、この形のままでは判断ができません。判断できない目標を掲げると、頑張った分だけ手応えがなくなっていきます。
直し方はひとつです。その目標が実現したとき、どの数字が動くはずかを考えます。認知が広がったのなら、社名や名前での検索、あるいは問い合わせの「どこで知ったか」の内訳が動くはずです。
迷ったら「その数字が動いたら、次の一手が変わるか」で選ぶ
指標選びで迷ったときの物差しは、ひとつ持っておけば足ります。その数字が動いたとき、自分の次の行動が変わるかどうかです。
変わるなら、見るべき数字です。増えても減っても同じことをするなら、見なくていい数字です。
この物差しを通すと、報告のための数字と、判断のための数字が分かれます。分けておくと、数字を見る時間そのものが短くなります。
この4行が効いてくるのは、2回目からです
4行の本当の価値は、1回目ではなく2回目に出ます。
1回目に残るのは、基準と結果が1組だけです。けれど3回、5回と続けると、「自分の商売では、この施策はこのくらいの数字になる」という、手元の相場ができてきます。
相場が分かると、次の企画の判定基準を勘で決めなくてよくなります。他社の平均値を探し回る必要もありません。ひとつずつの判断が、少しずつ資産になっていきます。
保存版:施策を始める前の確認リスト
- 動かしたい数字を、ひとつだけ選んだか
- その数字を見る画面と絞り込み条件を、名指しで書いたか
- 続ける・直す・やめるの線を、数字で引いたか
- 検証する日付を、カレンダーに入れたか
- その数字が動いたとき、次の行動が変わると言えるか
この4行が書けるようになると、施策の数を増やさなくても、前に進む速さが変わります。うまくいかなかった施策まで、次の判断材料として手元に残るからです。
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よくある質問
小さな施策にも、この4行を書く必要がありますか
1回きりで終わる作業なら必要ありません。これから何度も繰り返すつもりのもの——ブログ、広告、定期配信、営業のフォロー——にだけ書けば十分です。繰り返さないものに基準を持っても、活きる場面が来ないからです。
数字が少なすぎて判断できないときは、どうすればいいですか
件数が一桁の場合は、率ではなく実数で見て、判定の期間を長めに取ります。「1週間のクリック率」ではなく「30日で申込が何件か」と置き直す、という直し方です。母数が小さいときの率は、数件の増減で大きく動いてしまうためです。
判定基準の数字は、どうやって決めればいいですか
最初は、過去の自分の数字を基準にするのがいちばん確実です。過去のデータがなければ、「これ以下なら続ける気にならない」という感覚の線で構いません。1回目は基準を当てにいく回ではなく、2回目以降のための物差しを作る回だと考えてください。
