この記事の要点
- 「検討します」のあとに返事が来ない状態は、迷っている途中ではなく、すでに判断が下りている状態です。
- 決まっている保留とは、返事がまだ来ていないだけに見えて、実際には「いまは動かない」という結論が出ている状態のことです。
- 決まっている保留を動かすのは催促ではなく、相手が断ることも選べる形で材料を渡し直す一通です。
提案を送ったあと、「検討します」と言われました。それから、返事がありません。
この記事では、返事が来ないまま止まっている状態を「決まっている保留」と呼びます。なぜそれが生まれるのかを3つに分けたうえで、催促にならない形で一度だけ動かす手順を整理します。
「検討します」は、どういう状態を指しているのですか
先に、自分の失敗から書きます。
以前、私が自分で開催したセミナーは、参加者が集まりませんでした。内容は充実していたと思っていたのですが、ご案内が直前になってしまったのです。
そのとき私が最初に疑ったのは、案内文の書き方でした。けれど原因はそこではなく、渡すのが遅かったことでした。
いまは、企業や講師の方の裏方として、思想や理念を言葉にし、選ばれる事業や仕組みへ変えていく仕事をしています。裏方なので、発注する側の懐事情もずっと見てきましたし、私自身も発注する側に立つことがあります。
その両側から見ていると、返事が来ない案件では、同じことが起きています。相手の中では、もう決まっているのです。
決まっている保留とは何ですか
決まっている保留とは、相手からの返事がまだ来ていないだけに見えて、実際には「いまは動かない」という判断がすでに下りている状態のことです。
「検討します」という言葉は、検討が始まる合図のように聞こえます。実際には、その場を穏やかに終えるための言葉として使われていることのほうが多くあります。
……これ、本当に多いです。
保留として置いておくと、止まるのはこちら側です
やっかいなのは、相手の返事そのものではありません。こちら側の動きが止まることです。
「まだ検討中かもしれない」と思っている限り、その席は埋まったままです。次の相手に声をかけるのが後回しになり、見込みの数にも、決まっている保留が混ざったまま残ります。
入る予定のない売上を、あるものとして数えている状態です。
なぜ、決まっている保留が生まれるのですか
理由は大きく3つです。どれも、相手の熱意が足りないという話ではありません。

理由① 決めるための材料が、揃っていない
ほとんどの人は、一人で決めていません。社内の誰かに説明したり、家族に相談したりしています。
そのとき相手の手元にあるのは、話を聞いたときの記憶です。金額はいくらか、何をしてもらえるのか、いつまでかかるのか。うろ覚えのまま人に説明するのは、難しいことです。
説明できないものは、決められません。相手が止まっているのは、迷っているからではなく、手ぶらだからということがあります。
理由② 決める順番が、回ってこない
相手には、こちらの提案以外のことが並んでいます。人を採るか、設備を直すか、目の前の納期を守るか。
以前、「競合分析の前に。お客様が比べている見えない3つの競合」という記事で、比べられている相手は同業ではなく「自分でやる」「何もしない」「別のことに使う」の3つだと書きました。あの記事は提案を出す前の話で、この記事は出したあとの話です。
返事が来ない状態は、その3つのうち「何もしない」がいったん選ばれた結果として読めます。順番が来ていないだけなら、いつ来るのかを聞けば済みます。
理由③ 断る言葉を、持っていない
3つ目が、いちばん見落とされます。相手は、断り方が分からないのです。
丁寧に話を聞いてくれた人に「やめておきます」と伝えるのは、気が重いことです。理由を説明しなければいけない気がして、書き出しては消し、返信が後回しになります。
沈黙は、断りの代わりに使われています。返事が来ないのは無視されたからではなく、断る言葉が見つからないから、ということがあります。
私はここで、何度も読み違えてきました。
決まっている保留は、どうやって動かすのですか
やることは3つです。どれも、追いかける量を増やす話ではありません。
手順① 期限を、こちらから置く
決まっている保留は、期限が無いから保留のままでいられます。
こちらの都合を、そのまま伝えてください。今月末でいったん区切ること、次に着手できるのはいつになるのか。ここで作り話の締切を置いてはいけません。実際には空いているのに「あと1枠です」と書けば、その一言で今までの話が全部うそになります。
本当のことだけを、期限の形にします。
手順② 催促ではなく、材料を送り直す
「その後、いかがでしょうか」は、相手に仕事を渡す文です。読んだ人は、返信の文面を考えるところから始めなければいけません。
代わりに送るのは、理由①で足りていなかったものです。費用、期間、こちらがやること、やらないこと、頼まなかった場合に起きること。これを1枚にまとめて、そのまま人に転送できる形で渡します。
次の図は、同じ場面で送る2種類の文を並べたものです。

手順③ 断りやすい一文を、添える
最後に、断る選択肢があることを、こちらから書きます。
「いまは時期ではない、というお返事でも大丈夫です」。この一文があると、相手は理由を用意しなくてよくなります。断ってよいと分かった相手は、返事を書けるようになります。
断りが返ってくるのは、損ではありません。決まっている保留が、はっきりした「いいえ」に変わるだけです。
一度だけです。ここまでやって返事が無ければ、それが答えだと受け取って、こちらから閉じます。
ただし、これで決まるとは限りません
型の限界も書いておきます。この3つは、相手が決められる状態をつくるだけのものです。
そもそも必要とされていない提案は、材料を揃えても選ばれません。この手順は、迷いを判断に変えるところまでしか働きません。その判断が「はい」になるかどうかは別の話です。なぜその仕事をしているのか、なぜあなたに頼むのか。ここは型では埋まらず、その人にしか語れない部分です。
なぜ、この話を書いているのですか
私は、煽りや誇大な表現に頼らないやり方を選んできました。
ただ、そう決めた人ほど、返事が来ない相手を追いかけません。しつこいと思われたくない、迷惑をかけたくない。そう考えて、黙って待ちます。一方で、押し込むことをためらわない人は、何度でも連絡します。結果として、遠慮した側が機会を失います。
マーケティングは、売り込む技術ではなく、売り手と買い手の見え方を揃える行為だと考えています。相手が決められないまま置かれているとき、材料を渡し直すのは押し売りではありません。相手の判断を助ける行為です。
誰かのために踏ん張っている人が、遠慮したというだけの理由で選ばれないのは、もったいないと思っています。
保存版:決まっている保留の確認リスト
- 「検討します」と言われてから、何日経っているか
- その案件を、見込みの数にまだ入れて数えていないか
- 相手が誰かに説明するための材料を、こちらから渡したか
- その材料は、そのまま人に転送できる形になっているか
- こちら側の期限を、相手に伝えてあるか
- その期限は、本当のことか(作った締切になっていないか)
- 断ってよいと、こちらから書き添えたか
- ここまでやったうえで返事が無い相手を、こちらから閉じたか
この確認は、追いかけるためのものではありません。抱えたまま動けなくなっている席を、自分の手で空けるための作業です。
メールマガジンでは、こうした一通の書き方や、そのあとの導線の作り方を、場面に沿ってお届けしています。いただいた質問や感想には私が目を通していますので、よろしければ下のご案内からお受け取りください。
最後にひとつ、持ち帰っていただければと思います。いま返事を待っている相手に、こちらが最後に渡したのは材料でしたか。それとも、催促でしたか。
よくある質問
「検討します」と言われたあと、いつ連絡すればいいですか
目安は、相手がその言葉を口にした日から1週間です。それより早いと、材料を読む時間そのものが無く、それより遅いと、話した内容を相手が忘れています。ただし大事なのは日数ではなく、連絡の中身です。1週間後に「その後いかがでしょうか」と送るくらいなら、3日後に、相手が社内や家族に説明するための1枚を送るほうが働きます。決まっている保留は、時間をかければ動くものではありません。材料が渡っていない状態は、待っていても変わらないからです。
何度も連絡すると、しつこいと思われませんか
しつこさは、回数ではなく中身で決まります。「その後いかがでしょうか」を3回送れば催促が3回ですが、相手が誰かに説明するための材料を1回送るのは、催促ではありません。相手の手間が増えるか減るかで分かれます。加えて、断ってよいと書き添えてあれば、相手は返事を負担に感じにくくなります。気になる場合は、回数の上限をこちらで決めてください。材料を1回、期限を1回、それで返事が無ければ閉じる。追いかける量ではなく、追いかけ方と終わり方を先に決めておくことです。
返事が来ないまま終わった相手は、もう追わなくていいですか
追わなくて構いません。ただし、名簿から消す必要もありません。断られた理由が「時期」だった場合、状況が変われば相手のほうから戻ってきます。決まっている保留は、見込みの数からは必ず外してください。そのうえで、案内やメールマガジンが届く場所には残しておけば十分です。数字の上で締めることと、縁を切ることは別のことです。
