この記事の要点
- 具体を足すほど信用が上がるわけではありません。数が増えるほど、読む人は一つひとつを確かめるのをやめます。
- 確かめられる具体とは、読んだ人がその場で、あるいは少し調べれば本当かどうかを確かめられる情報のことです。
- 一つの主張を支えるのは、確かめられる具体が1つで足ります。確かめられない具体は、足すほど全体の信用を下げます。
実績を並べたのに、反応が変わらない。数字を足したのに、問い合わせが増えない。
この記事では、読んだ人が本当かどうかを確かめられる情報を「確かめられる具体」と呼びます。信じてもらえる具体と、働かない具体を分けたうえで、数を足す代わりに1つを確かめられる形にする手順を整理します。
なぜ、具体を足すほど信じてもらえなくなるのですか
先に、自分の側から書きます。
私は高校でいじめにあって中退し、一時期は中卒でした。中卒というだけで仕事が見つからず、ずっと引きこもっていた時期があります。その後、高校浪人をして地元の高校に入り直しました。
その頃の自分に、差し出せる実績はありませんでした。
いまは、企業や講師の方の裏方として、思想や理念を言葉にし、選ばれる事業や仕組みへ変えていく仕事をしています。ですのでこの記事は、誰かを指さす話ではなく、書けることが何も無い側から始めた人間の話として読んでいただければと思います。
読む人は、並んだ具体を数えていません
実績や事例をたくさん並べると、強くなる気がします。実際には、逆のことが起こります。
読む人は、並んだ具体を一つずつ検証しません。全体をまとめて眺めて、本当らしいかどうかを一度で判断します。そして確かめようのない情報が一定の量を超えると、判断は「たぶん本当」から「たぶん盛っている」へ切り替わります。
よかれと思って足したものが、いちばん効きを弱めていることがあります。
一つでも確かめられないものが混ざると、周りまで疑われます
もう一つ、やっかいな点があります。
並べた具体のうち一つが怪しいと思われた瞬間、その隣にある本当の話まで同じ扱いになります。信用は項目ごとに積み上がるのではなく、まとめて上下するからです。
確かめられない具体を足すのは、足し算ではなく引き算になります。
確かめられる具体とは何ですか
確かめられる具体とは、読んだ人がその場で、あるいは少し調べれば本当かどうかを確かめられる情報のことです。
反対に、確かめられない具体とは、読んだ人が確かめる手段を持たない情報です。どちらも同じくらい具体的に見えますが、読む人の中での働きがまったく違います。
次の図は、同じことを言っている2種類の書き方を並べたものです。ここに出てくる数字や年は、書き方の違いを示すための例文であり、私や当事務所の実績ではありません。

違いは、情報の細かさではありません
図の中で丸をつけたほうの文が強いのは、細かいからではありません。読む人が「これは確かめられる」と感じられるからです。
確かめられる具体には、共通する3つの特徴があります。誰が言っているのかが分かること。言い切っている範囲が限られていること。確かめる手がかりが文のそばにあること。
逆に言えば、この3つのどれも無い文は、どれだけ細かく書いても飾りのままです。
確かめられる具体は、どうやって作るのですか
手順は3つです。いま書いてある文を、順番に直していきます。

手順① 主語を、自分に戻す
まず、主語を「多くの方」「お客様」から「私」「当社」へ戻します。
「多くの方に喜ばれています」は、誰が言ったのか分かりません。「私は、この手順をすべての案件で最初にやっています」なら、言っているのは書き手本人です。責任の所在がはっきりした文は、それだけで確かめる対象になります。
地味な直しです。
手順② 範囲を、狭めて言い切る
次に、言い切る範囲を狭めます。
「効果があります」は広すぎて、当たっているのか外れているのかを誰も判定できません。「3か月続けた方の場合は」「はじめての方に限っては」と条件をつけると、外れる可能性のある文になります。
外れる可能性がある文だけが、当たっていると受け取ってもらえます。外れようのない文は、信じる対象にもなりません。
手順③ 確かめる方法を、そばに置く
最後に、読む人が確かめられる手がかりを、その文のそばに置きます。
無料で公開している記事、実際の画面、当日使った資料、返金や解約の条件。大事なのは、確かめようと思えば確かめられる状態にしておくことです。
ほとんどの人は、実際には確かめません。それでも効きます。人が安心するのは、確かめたときではなく、確かめられると分かったときだからです。
具体は、いくつ入れればいいのですか
一つの主張につき、確かめられる具体を1つ。これが目安です。
2つ目からは、増やすほど効きが落ちます。3つ以上並ぶと、読む人は数えるのをやめ、印象だけで判断します。足したくなったときは、足す代わりに、いま置いてある1つがもっと確かめやすくならないかを見てください。
削るほうが、早いです。
ただし、確かめられる形にしても、伝わるとは限りません
型の限界も書いておきます。この3つの手順は、書いてあることを信じてもらいやすくするだけです。そもそも相手にとって関係のない話は、確かめられる形にしても読まれません。
確かめられる具体は、正しさを支える土台であって、選ばれる理由そのものではありません。なぜその仕事をしているのか、なぜその値段なのか。ここは型では埋まらず、その仕事をしている人にしか書けない部分です。
「行動で書く」話とは、向きが逆です
以前、「『不安です』では伝わらない文章。感情ではなく行動で書く」という記事で、お客様の状態を描くときに感情の言葉を動きに置き換える話を書きました。
あれは、相手を描くときの具体の使い方です。この記事は向きが逆で、自分の側を証明するときの具体の使い方を扱っています。相手を描く具体は多いほど輪郭が出ますが、自分を証明する具体は多いほど疑われます。同じ「具体」でも、向きによって効き方が反対になります。
なぜ、この話を書いているのですか
私は、煽りや誇大な表現に頼らないやり方を選んできました。理由は、そのほうが上品だからではありません。
盛った文章がいちばん効いてしまう場所では、いちばん誠実な人が損をするからです。手元にある本当のことしか書かない人は、盛る人の隣に並べられた時点で、地味に見えます。そして選ばれなかったとき、その人はたいてい「自分の実績が足りない」と受け取ります。
けれど足りていないのは、実績の数ではないことがあります。確かめられる形になっている具体が、1つも置かれていないだけということです。これは量の問題ではなく、形の問題です。誰かのために踏ん張っている人が、そこで損をしなくていいようにと思って書いています。
保存版:確かめられる具体の確認リスト
- その主張を支えている具体は、いくつ並んでいるか
- 並んだ具体のうち、読む人が確かめられるものはどれか
- 確かめられない具体を削っても、主張そのものは立つか
- 主語が「多くの方」「お客様」になっている文はどれか
- その文の主語を、自分に戻せるか
- 言い切っている範囲は、外れる可能性がある広さか
- 確かめる手がかりが、その文のそばに置いてあるか
- 一つの主張につき、確かめられる具体を1つに絞れているか
この確認は、書けることを減らすためのものではありません。手元にある本当のことを、いちばん効く形へ置き直すための作業です。
メールマガジンでは、こうした書き方や、書いたあとの導線の作り方を、場面に沿ってお届けしています。いただいた質問や感想には私が目を通していますので、よろしければ下のご案内からお受け取りください。
最後にひとつ、持ち帰っていただければと思います。いまの原稿に並んでいる具体のうち、読んだ人が確かめられるものは、いくつあるでしょうか。
よくある質問
実績がまだ少ないのですが、何を書けばいいですか
実績の数を探すのではなく、確かめられる形になっているものを1つ探してください。件数や金額でなくても構いません。いつから続けているか、どういう手順でやっているか、無料で公開している記事があるか。これらはすべて、読む人が確かめられます。逆に、少ない実績を大きく見せようとして「多くの方に」「圧倒的な」といった言葉を足すと、確かめられない具体が増えるだけで、信用はむしろ下がります。実績が少ないことは弱点になりますが、盛ることは弱点では済みません。
数字を書くと、かえって嘘っぽくなることがあります。なぜですか
その数字を、読む人が確かめる手段を持っていないからです。数字は具体の中でもいちばん強く見えるぶん、確かめられないと分かった瞬間にいちばん強く疑われます。書くのであれば、いつの数字か、何を数えたものか、誰が数えたものかのどれかを添えてください。範囲がついた数字は、外れる可能性がある文になり、それによって受け取ってもらえるようになります。どれも添えられないなら、その数字は書かないほうが、文章全体は信じてもらえます。
お客様の声は、何件くらい載せればいいですか
件数を増やすことより、1件が確かめられる形になっているかを先に見てください。名前も背景も分からない短い賞賛が20件並ぶより、どういう状況の方が、いつ、何をして、どうなったのかが書かれた声が1件あるほうが働きます。増やしたくなったときは、増やす代わりに、いま載せている1件をもっと具体的に書けないかを、ご本人に確認できる範囲で見直してください。なお掲載にあたっては、必ずご本人の許可を取り、内容を書き換えずに引用してください。
