この記事の要点
- 空いているという事実だけでは、好機かどうかは決まりません。決めるのは、空いている理由のほうです。
- 空席の理由とは、ある市場や切り口が空いているように見えるとき、その空白をつくっている原因のことです。
- 空席は「気づかれていない空席」「割に合わなかった空席」「表に出ていない空席」の3つに分かれ、取るべき次の一手がそれぞれ違います。
調べてみたら、競合がいない。同じことを言っている人が見当たらない。
この記事では、その空白をつくっている原因を「空席の理由」と呼びます。空いて見える場所を3つの型に分け、どれなのかを始める前に見分ける手順を整理します。
なぜ「誰もやっていない」は、そのまま好機にならないのですか
先に、自分の失敗から書きます。
私は、企業や講師の方の裏方として、思想や理念を言葉にし、選ばれる事業や仕組みへ変えていく仕事をしています。人の集客を設計する立場ですが、自分のこととなると読み違えます。
以前、自分でセミナーを開いたとき、参加者が集まりませんでした。内容は充実していたと思うのですが、不人気でした。理由は中身ではなく、案内が直前だったことでした。
空いていた席には、席が空くだけの理由がありました。そしてその理由は、私が最初に考えたものとは違いました。
空白は、好機の証拠でも危険の証拠でもありません
市場を見るときも同じことが起こります。空いている、という事実そのものは、何も教えてくれません。
そこが空いているのは、まだ誰も気づいていないからかもしれません。誰かが試して、割に合わずに引き上げたからかもしれません。あるいは、すでに埋まっているのに、こちらから見えていないだけかもしれません。
空席には、たいてい先客の足跡があります。
空席の理由とは何ですか
空席の理由とは、ある市場や切り口が空いているように見えるとき、その空白をつくっている原因のことです。
空いていること自体は、判断の材料になりません。理由が分かってはじめて、入るべきかどうか、入るとしたら何を用意すべきかが決まります。足りていないのは勇気ではなく、材料のほうです。
空いて見える場所は、3つのどれですか
空席は、理由によって3つの型に分かれます。それぞれ、取るべき次の一手が違います。

型① 気づかれていない空席
本当にまだ手がつけられていない場合です。困っている人はいるのに、それが商品として名前を持っていない状態です。
この型は、たしかに好機です。ただし、条件がひとつあります。困っている人が、その困りごとを言葉にできていることです。
本人が言葉にできていない場合、探されることがありません。この型に入るときの仕事は、売ることより先に、その状態を言い当てる言葉を用意することになります。
型② 割に合わなかった空席
誰かが試して、引き上げたあとの空白です。いちばん見分けにくく、いちばん高くつきます。
割に合わない理由はさまざまです。手間のわりに単価が上がらない。売れるまでの説明が長すぎる。買う人はいるが、続けて買う理由がない。
この型は「入ってはいけない」という意味ではありません。前の人が撤退した条件を、自分が変えられるかどうかが分かれ目です。変えられないなら、同じ場所で同じ結果になります。
型③ 表に出ていない空席
すでに埋まっているのに、こちらから見えていない場合です。紹介と口づてだけで回っている仕事は、検索しても出てきません。
私は、人に直接会いに行くことを絶対条件にしています。お誘いを受けたら、なるべく行くようにしています。理由のひとつは、表に出てこない仕事の多くが、会った場所で決まっているからです。
この型では、探し方を変えないと相手が見えません。そして、探し方を変えずに「競合はいない」と結論を出すと、いちばん強い先客を数え落とすことになります。
どれなのかは、どうやって見分けますか
3つの確かめ方があります。順番に、外側から内側へ寄っていきます。

確かめ方① お客様の言葉で、探し直す
まず、探し方を変えてもう一度探します。業界の言葉ではなく、困っている人が実際に使う言い方で探し直してください。
商品名や手法名で探すと、同業しか出てきません。お客様は、自分の状態を自分の言葉で書きます。その言い方で探すと、見えていなかった先客が出てくることがあります。
地味な確認です。
確かめ方② やめた人に、やめた理由を聞く
次に、その領域を試してやめた人を探して、聞きます。2人で十分です。
聞くのは感想ではなく、事実です。いつ始めて、いつやめたのか。何が想定と違ったのか。時間はどれくらいかかったのか。ここで「割に合わなかった空席」かどうかが、かなりの精度で分かります。
やめた話は表に出ません。だから、聞きに行くほうが早いです。
確かめ方③ 買った人に、どこで知ったかを聞く
最後に、すでにその領域で買った人に、どこで知ったのかを聞きます。1件でも構いません。
答えが「知り合いに紹介されて」であれば、そこは「表に出ていない空席」です。市場が無いのではなく、入口が別の場所にあります。この場合、発信を増やすより、会いに行く先を決めるほうが近道になります。
ここを飛ばすと、遠回りになります。
ただし、見分けがついても答えにはなりません
型の限界も書いておきます。3つの型は、判断の材料であって、やる理由ではありません。
「気づかれていない空席」だと分かったからといって、自分がやるべき理由にはなりません。逆に「割に合わなかった空席」でも、条件を変えられる人にとっては入る価値があります。型が答えを出してくれるわけではないのです。
型は使うものであって、型に使われないようにしたいと思っています。その場所でやり続けられる理由は、その仕事をしている人にしか書けません。
「競合がいない」を疑う話とは、少し違います
以前、「『競合がいない』は本当か。市場調査で見落としがちな3つの死角」という記事で、調べたつもりで見えていない部分の話を書きました。
この記事は、その次の段階です。調べ直したうえで、それでも空いていたときに、その空白をどう読むかという話です。見落としを潰しても、空席の理由が分からなければ、入るかどうかは決められません。
なぜ、この話を書いているのですか
空いている場所に入って動かなかったとき、多くの人はまず自分を責めます。
けれど実際には、入る前から条件が決まっていたということが起こります。前の人が引き上げた理由を、そのまま引き受けてしまっている場合です。これは能力の問題ではなく、材料の問題です。
そして、こういうときに長く粘ってしまうのは、たいてい真面目な人のほうです。誰かのために踏ん張っている人が、確かめれば分かったことのために消耗するのは、もったいないと思っています。空席の理由を先に読むのは、慎重になるためではなく、力の使いどころを間違えないためです。
保存版:空席の理由の確認リスト
- その場所が空いていると、いつ、どうやって確かめたか
- 探すときに使った言葉は、業界の言葉ではなくお客様の言葉か
- その領域を試してやめた人を、2人以上探したか
- やめた理由を、感想ではなく事実として聞けたか
- すでに買った人に、どこで知ったかを聞いたか
- 答えが「紹介」だった場合、会いに行く先を決めてあるか
- 前の人が引き上げた条件のうち、自分が変えられるものはどれか
- その条件を変えられないとき、それでも続ける理由が書けるか
この確認は、慎重になって手を止めるためのものではありません。入ると決めたあとに、どこへ力を入れるかを先に決めるための作業です。
メールマガジンでは、こうした確かめ方や、確かめたあとの導線の作り方を、場面に沿ってお届けしています。よろしければ、下のご案内からお受け取りください。
最後にひとつ、持ち帰っていただければと思います。あなたがいま空いていると思っているその場所は、誰が、いつ、どうやって空席だと確かめたものでしょうか。
よくある質問
競合がいない市場は、狙わないほうがいいのですか
狙わないほうがいい、という話ではありません。判断を「空いているかどうか」ではなく「なぜ空いているか」に置き換えてください。気づかれていない空席なら、困っている人が使う言葉を先に用意することが仕事になります。割に合わなかった空席なら、前の人が引き上げた条件を自分が変えられるかどうかが分かれ目です。表に出ていない空席なら、発信より先に会いに行く先を決めることになります。空いていること自体は、良い知らせでも悪い知らせでもありません。
やめた人に話を聞きたいのですが、どうやって探せばいいですか
過去に発信していた形跡をたどるのが早いです。以前は同じ領域について書いていたのに、いまは別のことを書いている方が見つかります。連絡するときは、教えを請う形ではなく、聞きたいことを1つに絞って短く送ってください。「いつ始めて、何が想定と違ったか」だけで十分です。人は、成功の理由より、やめた理由のほうを具体的に覚えているものです。答えが返らないこともありますが、2人に届けばおおよその見当はつきます。
紹介だけで回っている市場には、あとから入れないのですか
入れます。ただし、入口を合わせる必要があります。紹介で回っている市場は、探している人が検索していないので、そこに書き続けても届きません。まず、その人たちが集まっている場所に自分が行くことです。そのうえで、会ったあとに読んでもらえる文章を自分の側に置いてください。会うことと、あとで読めるものがあること。この2つが揃うと、紹介は起こりやすくなります。順番を逆にすると、時間だけがかかります。
