この記事の要点
- 数字を見ても次の一手が決まらないのは、情報が足りないからではありません。報告の数字と判断の数字が、同じ画面に混ざっているからです。
- 判断の数字とは、その値が変わったときに、自分の次の行動が1つ変わる数字のことです。
- 見る数字は、決めたいこと1つにつき1つに絞ります。数字は増やすほど安心しますが、増やすほど決まらなくなります。
毎週レポートを開いている。数字も並んでいる。それなのに、閉じたあとに手が動かない。
このとき足りないのは、たいてい数字の数ではありません。
この記事では、見た直後に自分の行動が1つ変わる数字を「判断の数字」と呼び、その選び方を3つの問いと3つの手順で整理します。
なぜ、数字を見ても次の一手が決まらないのですか
先に、自分の話から書きます。
私は、企業や講師の方の裏方として、思想や理念を言葉にし、選ばれる事業や仕組みへ変えていく仕事をしています。これまでに、累計10億円を超える売上に貢献してきました。
ただ、数字に強かったからこの仕事をしているわけではありません。独立したあと、私は500万円以上の借金を抱えていました。ガス代をリボ払いにしていた時期もあります。当時のことは、自分の言葉で書くなら「もっとお金を稼がねば、と目玉を¥マークにしていた」という状態でした。
あのころ見ていたのは、金額そのものです。金額は結果なので、いくら眺めても、明日やることを教えてはくれません。
数字が足りないのではなく、性質の違う数字が混ざっています
手が止まるとき、画面にはたいてい数字が並んでいます。売上、アクセス数、登録者数、開封率、フォロワー数。
この中には、役割の違う2種類が混ざっています。誰かに状況を伝えるための数字と、自分が次の一手を決めるための数字です。
前者を「報告の数字」、後者を「判断の数字」と呼ぶことにします。混ざったまま同じ画面に並べると、どちらの役目も果たしません。
判断の数字とは何ですか
判断の数字とは、その値が変わったときに、自分の次の行動が1つ変わる数字のことです。
いっぽう報告の数字とは、状況を誰かに伝えるための数字です。伝える相手は、取引先かもしれませんし、家族や去年の自分かもしれません。相手がいるかぎり、こちらも必要な数字です。
2つの違いは、正確さでも新しさでもありません。見たあとに、自分の手が動くかどうかです。

図に挙げたものは、実在の案件ではなく、違いを示すための例です。どちらも正しい数字ですが、下の形にして初めて、直す場所が申込ページなのかフォームなのかが決まります。
報告の数字と判断の数字は、どうやって見分けますか
3つの問いで分けられます。1つでも「いいえ」になったら、その数字は今日の判断には使えません。
- その数字が動いたとき、明日やることが変わりますか
- その数字は、自分が手を出せる場所についていますか
- その数字を、誰のために見ていますか
問い① その数字が動いたとき、明日やることが変わりますか
いちばん単純で、いちばん効く問いです。今の値が2倍になった場合と、半分になった場合を思い浮かべます。
どちらでも同じことをするなら、その数字は判断には使えません。見てはいけない、という意味ではありません。判断の場に持ち込まない、という意味です。
問い② その数字は、自分が手を出せる場所についていますか
売上は、いくつもの出来事が積み重なった結果です。結果の数字をにらんでも、触れる場所が見つかりません。
触れる場所は、たいてい一つ手前にあります。何人が見たか、何人が申し込みの画面まで進んだか、何人がその途中でやめたか。手前の数字ほど、直せる場所の近くにあります。
ここが、いちばん抜けます。
問い③ その数字を、誰のために見ていますか
同じ数字でも、目的が変われば役割が変わります。フォロワー数は、自分の判断のためにはほとんど動かせませんが、取引先へ状況を説明する材料としては働きます。
報告の数字が悪い、という話ではありません。難しくなるのは、報告のために整えた数字を、そのまま判断にも使おうとしたときです。
報告の数字は月に一度まとめる。判断の数字は毎週見る。役割で分けてしまえば、どちらも軽くなります。
判断の数字は、どうやって選べばいいですか

手順① 決めたいことを、先に一文で書く
数字から入ると、必ず増えます。先に、決めたいことのほうを書きます。「来月も広告を続けるかどうか」「この講座の案内文を書き直すかどうか」。
この一文がないまま画面を眺めている時間が、いちばん長くなりがちです。
手順② その判断を変える数字を、1つだけ選ぶ
書いた判断に対して、「この値がこうなっていたら答えが変わる」という数字を1つ選びます。
2つ選びたくなったら、判断のほうが2つ混ざっています。数字を増やすのではなく、判断を分けてください。
1つに絞ると、心細くなります。それでも、絞ったほうが決まります。
手順③ 「こうなったらこうする」を、見る前に書く
見る間隔と、判断の線を先に書いておきます。「毎週月曜に見る」「2週続けて下回ったら、案内文を書き直す」。
先に書いておくと、数字を見た日に迷いません。数字を見てから基準を決めると、その日の気分のほうが強く出ます。
始める前に測り方を決めることは、以前「効果が分からない施策をなくす」という記事で4行の型としてまとめました。この記事はその手前ではなく、あと側の話です。すでに並んでしまった数字の中から、見るものを選び直すときに使ってください。
見る数字を減らすと、なぜ決まるのが速くなるのですか
数字を増やすと、安心します。判断の材料が増えたように感じるからです。
ただ、増えているのは材料ではなく、解釈の余地のほうです。10個の数字が並べば、どんな結論にも合う組み合わせが必ず見つかります。そうなると、最後は気分で決めることになります。
1つに絞った数字は、都合よく読めません。だから、決まります。
ただし、数字が判断してくれるわけではありません
型の限界も書いておきます。判断の数字は、判断を軽くする道具であって、判断そのものではありません。
数字が下がった理由の候補を挙げられるのは、その現場にいる人だけです。先週何を出したのか、誰にどう言われたのか、どんな一週間だったのか。答えを持っているのが数字の外の事情だった、ということは珍しくありません。
型は使うものであって、型に使われないようにしたいと思っています。あなたにしか挙げられない候補は、指標の一覧表の中には載っていません。
なぜ、見る数字を選ぶ話を書いているのですか
売上とは、想いが届いた数だと思っています。感謝の数、と言い換えてもいいかもしれません。
だからこそ、数字が読めないままだと苦しくなります。仕事の中身が届いていないのか、中身は良いのに届け方だけが合っていないのか、区別がつかないからです。この2つは、まったく別の話です。
そして、判断の数字を持たないまま消耗しやすいのは、たいてい丁寧な人のほうです。報告の数字をきちんと作り込む人ほど、自分が動くための数字を持っていません。誰かのために踏ん張っている人が、見る数字を取り違えているというだけで先に力尽きるのは、もったいないことだと思っています。
数字を減らすのは、手を抜くためではありません。続けるためです。
保存版:判断の数字の確認リスト
- 決めたいことを、数字より先に一文で書いたか
- その判断を変える数字を、1つだけ選んだか
- 選んだ数字は、2倍になった場合と半分になった場合で、やることが変わるか
- 選んだ数字は、自分が手を出せる場所(結果ではなく一つ手前)についているか
- 「こうなったらこうする」を、数字を見る前に書いたか
- 見る間隔を決めたか(毎週なのか、月に一度なのか)
- 報告の数字と判断の数字を、同じ画面に並べていないか
この確認をすると、開く画面の数が減ります。減った時間は、数字を眺める作業ではなく、直す作業のほうへ戻ってきます。
メールマガジンでは、こうした判断の手前にある考え方を、実際の場面に沿ってお届けしています。よろしければ、下のご案内からお受け取りください。
最後にひとつ、持ち帰っていただければと思います。あなたが今週いちばん長く眺めた数字は、あなたの行動を1つでも変えたでしょうか。
よくある質問
判断の数字は、いくつまで絞ればいいですか
決めたいこと1つにつき、1つが基本です。判断が3つあるなら数字も3つになりますが、その場合も1つの判断に1つずつ紐づいている状態にしてください。同じ判断に対して数字を2つ持つと、両方が同じ方向を向いていないときに決められなくなります。2つ選びたくなったときは、判断のほうが2つ混ざっていないかを先に確かめてください。
件数が少なすぎて、率で見ると毎週大きく動いてしまいます。どうすればいいですか
率ではなく実数で見て、期間を長めに取ってください。申し込みが週に2件か3件という規模では、1件の増減で率が大きく動き、実態より良くも悪くも見えます。判断の線も「率が何パーセント」ではなく「2週続けて何件を下回ったら」という形にすると、母数の小ささに振り回されずに済みます。
報告のための数字は、作らなくていいのですか
必要です。取引先や関係者に状況を伝える場面では、報告の数字のほうが役に立ちます。分けたいのは、作るかどうかではなく、見る場面と頻度です。報告の数字は月に一度まとめ、判断の数字は毎週見る。同じ画面に並べず、目的ごとに置き場所を分けてください。
